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社会的意義、社会的貢献に対する理解と良心による資金提供なのである。こうした資金提供者(donors)のほかにも、市民セクターはその規模にかかわらず、財源を多元的に確保している。逆に、財源を多元的にもつことによって、市民セクターはその活動の独立性を維持できているともいえる。なお、本章で事例研究として提示している国際交流活動の市民セクターでは、いずれもサービスを受けている参加者からの会費を主な資金源としているようである。
もう1つはリスクマネジメントである。行政や企業は常にあらゆる不確実要因、緊急事態に対応することが可能なだけの資金的余剰を確保している。しかし一方で、市民セクターは本来利潤蓄積を目的としていないため、その活動資金、組織運営費(施設使用料、事務関連費、雑費等)等をまかなうだけの資金調達で精一杯である。たとえ行政からの助成をうけても、特定のイベントにたいする助成であったり、「ひも付き」であったりして、リスク時に対応するための蓄えにあてられているケースはほとんどないように思われる。したがって、ボランティアスタッフが活動時に、何らかの事故や、けがに遭遇した場合に、保険の問題とも並行して、どのようにして補償するのか、非常に重要な問題である。重大な事故、事件が発生すれば、その市民セクターの活動は市民権を失い、行政からの支援も絶たれる状況が発生しかねない。そうなれば、市民セクターの組織ライフサイクルにピリオドが打たれてしまう。
この課題は単に市民セクター自身がいかなるリスクにも対応できるよう備えるだけの問題ではなく、市民セクターをとりまく法・行政制度の整備の必要性も同時に要求するのである。

 

(3) サービス管理
市民セクターは企業組織のように設備投資し、財を生産、流通、販売するようなことは実践しないのが共通の見識であることはすでに述べた。しかし、福祉関連であれ、スポーツ振興であれ、国際交流であれ、何らかのサービスを市民社会に対して提供していることを否定する者はいないであろう。そこで市民セクター活動にともなうサービス管理ではマーケティングの概念を適用しながら論じることにする。
(a) マーケティング的側面
非営利セクターのマーケティング的分析にかんする先行研究は数多い。それらの研究の中で代表的なものを若干取り上げて紹介する。

 

 

 

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